2021.01.25 の日記:サっちゃんの話

日記を毎日書いていると,以前言及した内容に似たような話がだんだんと出てくるようになる.違う物事の話を書いているように見えるときも,その感想や考察を通してもともと自分の中にあった同一の考えを書いているだけだったりする.日記を書くにつれて新しい話題の割合がどんどん小さくなる.何年か素直に日記を書き続けたら,何を書いても既出になって,もう本当に新しいことは書けなくなるんじゃないかと思う.それまでに書いた日記を全部読めば一人の人間の輪郭がだんだんと見えてきてしまう.これめちゃくちゃ嫌じゃないですか?人間の底が知れるというか.謎がない人間に魅力的な人間はいない.女スパイが魅力的なのと同じ理屈.人間,全部共感されたらおしまいなんですよ.藍染惣右介の「憧れは……(略)」もたぶん本質的には同じことを言っている.だからそうならないように普段から新奇性のある発言や行動を体の底から捻り出して絞り出すように努めている.新奇性のある言動は,ただ面白いことがしたいだけじゃなくて,共感に対する防衛機制が発動しているということでもある.

Rarefaction curve の話.Rarefaction curve はよく生態学で使われるもので,目的としては,限られたサンプリングから母集団の多様性を推定するために使われる.横軸にサンプリングした個体数,縦軸に種数などをプロットするときにできる曲線が rarefaction curve である.下の図を見てもらえば感じがわかると思う.

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サンプリング数が小さいうちは被りが少ないのでほとんど直線で種数が増加するが,サンプリング数が増加するにつれて被りが増えて曲線が寝ていき,極限では全ての種がフォローされて曲線は完全に水平線になる.ただ実際は環境中の全てをサンプリングすることはほとんど不可能なので,曲線が完全に寝るまで至らないデータから全体の種数を推定することになる.理論的な rarefaction curve は数式で記述することができるので,統計的な解析によってその数式のパラメーターを推定することができ,そのパラメーターの中に全体の種数も含まれる.曲線が最初の直線のうちは全体の種数は全くわからないが,データを蓄積して曲線が寝るにつれて全体の種数が精度よく推定できるようになる.

本題に戻ると,最初の話は,日記の日数を横軸,ネタの多様性を縦軸にして rarefaction curve を書くと数年で曲線が完全に寝てしまって本来の多様性がわかってしまうという話になる.曲線が完全に寝るのを待つ必要はなく,ネタがそこそこ被り始めた段階でも精度はともかく多様性の推定はできてしまう.僕は極力ネタの被りを許さず常に新しい話をし続けなけらばならない.