2021.06.24 の日記:この人また感想書いてる……

『太陽の黄金の林檎』の感想の続き。

6話目『目に見えぬ少年』

老婆が少年に対して透明になる魔法をかけたという嘘をつく話。

これも異常な人間が出てくる話。

“透明”になった側の孤独感ではなくて“透明”にした側の孤独感を書いてるのすごい。そこから考えると物語の設定が全て必然性を帯びてくる。魔法が偽物である理由も相手が少年である理由も場所も物語のオチも全てが最適化されているように感じる。すご。

相手の言動に対して自分からははたらきかけることのできない切なさみたいなのはまあわからんでもないけど、そこにはそれ故の美しさもあると思うのでそれをテーマにしてまた違った書き方でもう1作品あったら嬉しいな。

かなり面白いな~と思うけど特に好きなわけではない。


7話目『空飛ぶ機械』

古代中国で空飛ぶ機械を作った農民が処刑される話。

解釈が自分の中でまだ固まっていない。

たぶんメインのテーマではないし一切そういう意味が込められていないかもしれないけど、“役に立たない”理学やあるいはアートを国が贔屓しすぎても良くないかもしれないという教訓があるような気がする。“役に立つ”科学に対して理解のない政府という本来ありえない世界を書いていると言うとわかりやすいか。

こういう話を国というか王の視点から書くのは面白い。普通は理不尽に処刑される側の心情をあれこれ書くものだけど、ここで処刑する側の屈折した恐怖を書くのはやはりすごい。

レイ・ブラッドベリはなんというか弱者や強者といった立場には関係がなく人間に普遍的な異常さを書くのが上手い気がする。物語としては弱者に焦点を当てて恐怖感や悲壮感を書くほうが飲み込みやすいけど、あえて強者の心情を表現しようとすることで弱者強者に渡る普遍的な感情を読者に自覚させるという感じか。まあこの段落はけっこうテキトーなことを書いている気がする。この話も強者に特有の感情を書いている気もする。

弱者の話は弱者であることが必要以上の影響を持ってしまって読んでいるとウワーという気持ちになってしまうので強者の話のほうが好みである。弱者であることはそれ自体が強い立場にもなりうるので全人類の皆さんはそれを自覚して生きてください。この話はどう着地させても全員が幸せにはならないのでこれで終わりです。

この話も面白いな~と思うけど特別好きなわけではない。


どんな話でも考察のしようによっては面白くなるので評価基準が好きか好きじゃないかになってしまうな。特に感想文を書いてると自分が面白いと思うような内容の考察を書いてしまう (それはそう) のでどの話もよく考えると面白いという感想になってしまう。上の2話も読んだ直後は面白くも好きでもないな~と思っていたけど、感想文を書いている間にまあなんかよく考えたらわりと面白いな~という感想に落ち着いた。そういう意味で好きかそうでないかという評価は面白いかそうでないよりも本質的な基準になる。少なくとも僕は。