2021.10.05 の日記:言い訳Mustbe


数ヶ月前にNTTインターコミュニケーションセンター (ICC) で開催されていた「生命的なものたち」という展覧会に行ってきた。

ICCは初台にあるオペラシティの中に入っている文化施設で、メディアアートの展示がよく行われている。隣にはNTT東日本本社ビルがある。

数年前に住んでいた家からそう遠くない場所だったのに、今回行くまでこのICCの存在を全然知らなかった。まあ当時から博物館的な施設は好きだったけどアート方面はそれほど積極的に調べなかったので見逃していた。あと当時の生活圏はもう少し西の方だったので、物理的にも見逃していた。


のんびり歩きたい気分だったので新宿駅から徒歩で行くことに。そもそも地下深い京王新線のホームまで行くより地上から直接歩いて向かうほうが早いような気もする。

新宿の西側が好きなので楽しかった。何があるわけでもないけど雰囲気が好き。西側に限らずデカい駅の中で新宿駅が一番好きかもしれない。西口も南口も東口も好き。駅構内も駅周辺も好き。もし今後東京から離れて暮らすことになって、十年後に久しぶりに新宿に帰ってきたら懐かしさで泣くかもしれない。いや泣かないかもしれない。十年後の自分の感受性がわからない。ここ数年の自分を見ると段々と感受性が豊かになってきている気はするので絶対に感動はするような気がするけど、何かあって心が完全に死んでいる可能性もなくはない。


ICCに到着。ビル全体としては人がたくさんいたけど、ICC付近の空間に入った途端に周りに人が誰もいなくなったので怖かった。平日とはいえ開けた空間に本当に誰もいなくなったので怖かった。リミナルスペース。

ICCが入っているオペラシティは「都会」を感じて居心地の悪さを感じた。広くて綺麗で生々しさの欠片もない空間の中で僕だけが異物として存在している感覚。空間自体に対する嫌さではなくて、その空間にあたかも調和しているかのように振る舞っている人々に対する嫌さ。みんなで一緒に居心地の悪さを感じようって約束したじゃん!の気持ち。ICCに近づいて人がいなくなったことで少し安心した。


ICCの中にもほとんど人がいなかった。途中ちらほら他のお客さんを見たこともあったけど、けっこう長居して数回しか他の人を見なかったのでたぶん客が僕だけだったタイミングもあったと思う。そのくらい人がいなかった。


他にほとんど人がいなかったのと、かなりゆっくり展示を見ていたのと、あとたぶん僕が挙動不審だったのもあって、スタッフの人にめちゃくちゃ声をかけられた。体験型のアートが多かったのでそのやり方の説明だったり、決まった時刻に作動するアートがあってその告知だったり。この日は人から声をかけられたくない気持ちだったので、声をかけないでくれ~~~と心の中でずっと思っていた。まあ実際はそんな言葉を発するような外への方向を持とうとする気持ちではなくて、自分でも明確に不快感だとは認識できない未分化でぼんやりしたなんとなく不快なようなただそこに存在するだけの気持ちなので、嫌だなあと思うところまではいってないし、そもそも声をかけることはスタッフの業務なのでこれが構造的にあるべき状態だなという理性的な判断もはたらいていたし、とりわけここで述べる必要もないしおそらく述べるべきではない話ではある。今述べた時点で何か取り返しのつかないものが失われた。まあなんかわざわざ説明してもらったのに毎回「アッ…ドモ…」みたいな反応をしてしまったことの言い訳をしたかったみたいなそういうアレです。

(続く)