2021.10.07 の日記:これからはバランス感覚の時代 全てがバランス感覚に

(昨日の続き)

ICCの「生命的なものたち」に行った話。

展示の話を書いている途中で日記の更新が止まってしまっていた。記憶が薄れる前に残りを書いておきたい。

考えすぎて書けなくなるよりは、あまり考えずにテキトーな文章でもいいのでとにかく書こうとは思うけど、昔の日記を読んでいるとマジでテキトーなこと書いてるなぁ…と感じることも多いので、いい感じのバランスで書いていきたい。これからはバランス感覚の時代。全てがバランス感覚に。

あと、昔の日記を読んでると当時の自分がかなり元気でびっくりする。文章のテンションが高い。今は情緒が少し凪いでいるのでもうちょっと元気になってもいいかもしれない。

人混みに流されたわけではないけど変わってゆく私を……

↓本編

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MUSES EX MACHINA──AIが映し出す人と創造性の未来」

AIを使ったアートがいろいろ展示されていた。

naotokui.net

慶應大の徳井研究室というところがやっているらしい。


AIによる即興演奏。4つのパートが相互作用しながら即興で演奏をする。

面白かった。

けど、キャプションの内容について、AIと人間の違いを決定性に求めるのはわりと筋が悪い気がするけどどうなんだろうか……。生成プロセスが決定論的かどうかに問題を見出しているけど、単にモデルの設計の問題な気がする。反証的に考えると、「人間に本当に自由意志があってその行動に無作為性が含まれるかが即興演奏の芸術的価値に影響を与える」という主張はかなり認めづらいし、「素粒子の確率的な挙動から生成した本当の乱数を用いてAIが生成した即興演奏には根本的に異なる芸術的価値がある」という主張もかなり怪しい (面白くはある) ので、やはり乱数の問題はかなりどうでもいいような気がする (ここで哲学的な決定論と物理的な決定論を一緒にして考えてるけどまああまり関係ない)。人間が疑似乱数のシード値を恣意的に設定すればそれは本当の乱数になるのでそれで即興演奏を生成するという反例も考えられる。

再現性のあるものに独創性はないという主張ならわからなくはない。ある程度離散化された生成物なら再現性はあるけど。

いややっぱり再現性はどうでもいい気がしてきた。即興性に意味のある芸術は真に即興的でなければならない、みたいな主張がそもそも怪しくて、そこから決定性だったり再現性の話に繋げても意味が薄いようなそういう気持ちがある。その場その時だけの特別な体験に意味を見出すのはとてもわかるけど、その特別感が疑似乱数に脅かされるという感覚はあまりわからない。

万物は流転しているので全ての事物に再現性はありませんが!

人間と機械 (AI) はどこかで決定的に違うという前提があって、その要因を決定性に求めてみた、というようなことをやっている雰囲気を感じる。好みとして、機械に足りないものを突き詰めることでそれが人間を人間たらしめるものであることがわかるみたいな方向性よりは、AIという新しい技術を使って人間のアイデアを解体・再構築・拡張するみたいな方向性のほうが好き。

でも、最近のAIの発展で、今まで人間らしさだと感じていたものが機械にも再現できる幻想だった、というようなことを主張している人がめちゃくちゃいるので、そういう状況で本当の人間らしさがあるとしたらどこにあるのか、みたいな方向性で探究するのは面白いアプローチだなあと思った。人間らしさなんて本当は存在しないんだというキャッチーな主張を盲信することなく、人間らしさの存在を信じて追い求めるほうが確実にかっこいい。

あまり本筋と関係ないけど、僕の感覚的な意見としては、マルチモーダルなAIか生成過程をメタ的な構造で直接参照できるAIがある程度まで発展すれば人間の創造性はAIに完全に負けると思っているので早くそうなってほしい。前者はたぶんみんな思っているし現在進行系で検討・実用化されつつあるけど、後者はまだあまり言及されていないので見当違いかもしれない。というか今考えたら後者は前者の特殊な場合か。単語間の構造を繰り返し繰り返し様々なスケールで処理することでAIは人間のユーモアを完全に“理解”できるような気がするので早くそうなってほしい。

ここまでめっちゃテキトーに書いているので読み流してほしい。AIの専門家でもアートの専門家でもなんでもないので。SNSでAIに言及してる一部の人々よりはマトモなことを書いてると思うけど。

一応言っておくと、面白い作品だったのでめちゃくちゃ言及しているのであって否定しようとする意図はない。否定はしてるけど。面白い作品ならめちゃくちゃに批評していいということはないので、これはただの言い訳です。


めちゃくちゃ失礼でおこがましいことを言うけど、こういうメディアアートを見ると、俺がもっといいのを作ってやらァ!という気持ちになる。強く殴ってください。強く。

まあでも真面目に、個展みたいなやつは人生のどこかでやってみたい。来たるべき日に備えて貝をたくさん作っておこう。

(続く)