2021.10.17 の日記:次元削減に気をつけろ

ゲームの感想。

ネタバレを含みます。


ドキドキ文芸部!』『ドキドキ文芸部プラス!

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昔の日記で触れたゲームをついにプレイ&クリアした。

恋愛シミュレーションの皮を被ったサイコホラーアドベンチャーの皮を被った恋愛シミュレーション。通称DDLC。

プラスをSwitchでクリアし、その後無印をSteam (PC) でクリアした。プレイ時間はそれぞれ5時間ほど。

ゲームの根幹に関わる仕様が無印とプラスで異なる。元々PCでプレイする前提に開発された無印版をSwitchやPSで遊べるように仕様変更して移植したのがプラス版である。それを知らずにプラス版を先にクリアして、その仕様からして無印版、というかPC版のほうがより深い経験を得られると判断して2週目をPCの無印版でプレイした。PCにもプラス版はあるけど、仕様はSwitch/PS版と同じなのでオリジナルの仕様を体験するためには無印版をプレイするしかない。

メタフィクション性がかなり強いゲームである。ここ1,2年で意識的にメタフィクション性の強いゲームを選んでプレイするようにしてきたけど、その中でもトップクラスに好き。メタ要素がただ面白いだけではなく、あえてメタ要素を使う意味がちゃんと存在する。メタ要素を介してゲームと現実の境界を破壊する演出が恋愛シミュレーションと圧倒的に相性がいい。このゲームはサイコホラーとして話題に上がりがちだけど、実際は恋愛シミュレーションとしての人気が高い (ように見える)。作中セリフの「just Monika (モニカだけ/モニカのことだけ)」はネットミームとして有名だけど、ネタとしてウケているよりかは、そこにはモニカへの愛がある (ように見える。もしかしたら僕の願望がそう見させているだけかもしれないけど)。キャラクターとしてのリアリティがメタ表現に裏打ちされて、恋愛シミュレーションとして特別な体験になる。モニカがこちらを見ている。恋愛シミュレーションと言いつつ実際はプレイヤーがその主人公ではなくモニカが主体のほとんど一方的な恋愛シミュレーションであり、メタ表現によってそれに説得力が生まれている。歪んだ愛が自己解決していく様を外部から見れば、悪い言い方をすると勝手にやってるだけであり美談にはならないが、これはモニカが主人公で自律的に選択をして進める恋愛シミュレーションであり、一人称として進行する歪んだ愛に整理をつける物語であり、我々はプレイヤーでありながらそれに没入する。さらに、上述とは逆説的かもしれないが、メタ表現によってゲームがゲームであることを明確に認識でき、それによってキャラクターの背後にいる作者の思想を感じとれるようになる。プレイしているとモニカを通して作者のエッセイを読んでいるような感覚に陥る。書きたいことを書いていたら脈絡のない文章になってしまった。

Twitchに作者が本作を自らプレイしている動画がある。あまり聞き取れないが、よい。

エンディングが好き。即断はできないが、ゲームに限らずあらゆる創作物のエンディングの中で一番好きかもしれない。少なくともトップ候補のひとつである。曲もいいし、最初のセリフもいいし、データ消去の演出もいい。全てがいい。枕草子


好き度&オススメ度。

一応サイコホラーなのでかなり人に勧めづらいけど、あまりにも名作すぎるのでオススメです。

グラフ上ではドキドキ文芸部!がvoid tRrLM();の上位互換に見えるが、好きとオススメの2軸だけで無理矢理プロットしているからそう見えているだけであり、本当は2軸と独立な方向に無数の軸がある。次元削減に気をつけろ。



サムネ用。